紅玉屋日記 紅玉屋の今をお伝えします

”農業”と言われて何を思い浮かべますか?暑い、きつい、大変、過酷、儲からない。おおよそ大半の人はあまりいい印象を持っていないかもしれません。

紅玉屋では「農業は儲かる」と考えています。物質的な利益だけでなく精神的な豊かさも含め儲かる農業を提言します。限りある貴重な時間の中、日々の作業に追われ天候に左右されるばかりではいけません。

それでは儲かる農業とは具体的にどういうものか考えてみましょう。既存の農業経営に不安を感じている方や新規就農を考えている方にも参考になれば幸いです。

1. 儲かる農業とは?

まず儲かる農業とはどんなものかを考えた時、私の中では次の二つに絞られました。

  • 経費のかからない農業
  • 顧客に満足感を与えられる農業

答えは簡単、経費を圧縮して顧客を喜ばせること。

極端な話し、これができればどんな商売も大概うまくいくのです。しかし日本の農業は家族経営がそのほとんどなのでこの2つを徹底して追求することが儲かる農業につながります。

それでは最初に経費のかからない農業について考えていきましょう。

2. 経費のかからない農業

どんな商売においても経費の圧縮は非常に重要。膨大な利益があっても湯水のごとく経費を使っていたら儲けなんてありません。

特に家族経営では運転資金が家族の資金と直結している場合が多く、「諸経費を払うために学費を圧縮」といった状況も珍しい話ではありません。

さて、ここでサンプルとして1ヘクタールの果樹栽培を夫婦二人で行っている農家の圧縮すべき経費を明確にしていきましょう。

  1. 農機具代
  2. 病害虫防除にかかる農薬代
  3. 人件費
  4. 肥料代
  5. 燃料代
  6. 配送料及び資材代

目立つところでこの5つ。順位は金額の大きい順。といっても1と2が圧倒的すぎて他はどれも大差が無い場合が多いです。

それではそれぞれの項目を細かく掘り下げてみましょう。

2-1. 農機具代

近年では補助金や助成金、利息の低いものから無利息の制度資金などが充実しております。また農機具のネット販売も広がりつつありますので価格を調べて値引き交渉を進めていきましょう。余裕があれば5との関連もありますので乗用草刈機やスピードスプレイヤーなどは排気量の大きいものがオススメです。

2-2. 病害虫防除にかかる農薬代

ここ重要。農機具と違い毎年大きくのしかかってくる農薬代。ここを圧縮することができれば経営は大幅に安定することでしょう。

1ヘクタールのサンプル果樹農家、丁寧に防除を行うと年間の農薬代はおよそ80万円。病気(りんごの場合はふじやグラニースミスの黒星病、紅玉のうどん粉病、炭疽病)や害虫、ダニなどが広がれば100万円を越えることは珍しくありません。一般的に農業は「消費税を払うことを目標に」つまり年商1,000万を目標としているところに100万円という経費はかなりの痛手。さらに意外かもしれませんが基本的に農薬は生育期間中に感染してしまった病気にはあまり効果がありません。主な作用の仕方は感染させないように予防としての働きです。しかし特定の病気が感染の徴候にあっても二次感染を防ぐために防除は続けなければなりません。この場合は収入減が確定しているにも関わらず高額な防除を続けなければならないという恐怖があります。

近年の温暖化と呼ばれる気温の変化により既存の防除方法や農薬が効かない抵抗性を持った菌類の出現も議論されてきております。そのような状況で消費者が求めるのは無農薬、減農薬。これだけでもいかに日本の農業が厳しい状況かお分かりいただけるかと思います。

そんな状況に立ち向かうべく、各地の生産者が工夫を凝らして減農薬を達成しております。この減農薬こそが経営安定化、そして儲かる農業のポイントです!無農薬として販売されている農産物もありますが私自身、無農薬で何かを栽培された方に直接お会いしたことがありませんので今回は触れません。

農薬を減らすことが経営安定化、そして儲かる農業のポイントということになります。

2-3. 人件費

人件費の削減には作業効率の改善、機械化の促進、寝ずに働く、などありますが私が提言したいのは「作業効率の改善」です。軽作業でも人は悩むと手が止まります。悩まなければ作業の手は止まることがなく効率が大幅に改善します。良品から不良品を探す作業は早いのですが不良品の中から良品になりそうなものを探す時は非常に時間がかかります。

つまり、「作業効率の改善」とは圃場内に不良品を無くし、良品だけで揃えるということです。

2-4. 肥料代

無肥料という栽培方法もあるようですが、収穫として圃場から膨大な量の生産物を持ち出すので原材料となる肥料は必要と考えます。

2-5. 燃料代

これはもう近年の燃費の良い機械を使ってください。大排気量の農機具を低回転で使うと燃費が良くてオススメです。

2-6. 配送料及び資材代

こちらは販売量と比例して増えてしまいます。一般的にはお客様から頂くことが多いかと思います。運送会社との値段交渉を地道に行う他にありません。

2-7. 積極的に圧縮するべき対象は・・・

まずは農薬代。何は無くとも農薬代。次に人件費。肥料代や配送料、資材代などは状況に応じて増えてしまうので一概に圧縮できるかというと難しいところ。圧縮すべき経費が理解できたら次はどうしたら顧客に満足感を与えられるか考えていきましょう。

 

3. 顧客に満足感を与えられる農業

自らが栽培したものを買っていただく顧客の満足を第一に考えるべきではないか、確かにその通りです。しかしそれは潤沢な経営資金と人的資本があって初めて辿り着ける考えではないでしょうか。農業はまずビジネス、ほとんどの農家は家族を食わせるために農業をしています。お客様のことまで考える余裕はありません。諸経費を圧縮し、経営が安定してこそお客様の満足感を考えられものです。

それではお客様が喜ぶポイントを考えてみましょう。

  • 一般的な価格帯よりも安い
  • 取り寄せた商品を開封した時
  • 栽培状況を確認できること
  • 商品の品質
  • 圧倒的な美味さ

紅玉屋として10年以上全国のお客様に商品を届けてきて思うところはこの辺りです。特に「圧倒的な美味しさ」については先代の口癖でもあり、

圧倒的に美味いものを作らなければ生き残れない。圧倒的に美味いものを作れば顧客は勝手に増えていく。圧倒的に美味いものを作る過程で農薬の使用量は減っていく。圧倒的に美味いものは手がかからない。

柳澤俊秀

こんなことを休憩のたびに議論するような親父でした。まだまだ元気に畑をやってます。

勘の良い方はすでにお気付きかもしれませんが、圧倒的に美味いものとはその作物の「完全な状態」を指しています。完全な状態の作物を作ることができれば農家の打開すべき問題は全て解決し、「儲かる農業」への道が開けます。

3-1. 完全な状態とは

では「完全な状態」の農作物は何が素晴らしいのかざっくりとご紹介しましょう。

  • 完全な状態は細胞壁が完璧に並ぶので病害虫の入る隙間が無く、農薬の使用を減らすことができる
  • 完全な状態で収穫できる割合が増えると2級品など規格外のものが減るので作業効率が上がる
  • 諸経費を圧縮できるので一般的な価格帯よりも安く提供できる
  • 作業効率が良く圃場に手が行き届くので栽培状況をいつでも公開できる
  • 完全な状態で収穫した作物は品質が良く、長期間の鮮度保持も期待出来る。
  • 完全な状態の作物は圧倒的に美味い

など。他にも言いたいことはたくさんありますが、これだけで農家の問題が解決しお客様に喜んでいただけるということが容易に想像できるのではないでしょうか。

4. まとめ

「儲かる農業」とはいかにして「完全な状態」の作物を作るかに尽きます。教科書通りの作業をしっかりと行っていても細胞壁に隙間があれば病害虫にやられてしまいます。完全な状態の作物を作り続けることこそが減農薬、あるいは完全無農薬栽培への到達方法だと考えています。

次回は紅玉屋が実践している「完全な状態」のりんご(ふじ、紅玉、グラニースミスなど)とぶどう(ナガノパープル、ベニバラード、天山、シャインマスカットなど)の栽培方法を詳しく解説していきます。

最後にこれは私個人の感想であり、すでに農業経営が軌道に乗っている方や尊敬できる師に巡り会えた方などはそちらを優先してください。どのようなやり方でも構いません、農業に携わる多くの方が少しでも利益を上げ、生活の質を上げ、支払う税金の金額を上げることこそが日本の豊かさになり、家庭の豊かさとして還元されることを願うばかりです。

紅玉屋 柳澤航介

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